MINOTAUR INST.

J Eyewear Lab × MINOTAUR INST.
「ファーストペンギンとして先進的な取り組みを」

中屋光晴-Mitsuharu Nakaya-
株式会社JINS JEL事業グループ ディレクター
アパレルベンチャー企業にて複数のブランド創業に携わり、2014年株式会社ジェイアイエヌに入社。商品企画MD、マーケティングマネージャーを歴任して現職に至る

「僕たちが着手しているものは、ほとんど前例がない」

──従来のメガネをデザインするプロセスとテクノロジーを用いて設計するデザインとでは、ワークフローが変わった部分はありますか?

例としてNeuron4Dはラティス構造で作るアイウェア内部のパーツを3Dプリンターで製造しています。グラスホッパーというパラメトリックな3D設計ツールを使い、最適値を探していく形で作っています。そもそもそこが今までとは劇的に違うやり方で、例えばメガネは企画からローンチまでは1年半もかかってしまいます。その理由はパーツが多いことと、大前提として金型で作らないといけないというのがあります。金型生産でクオリティ担保、量産性を担保する形になっていて、金型を作るのに2カ月、その後も工程が一つひとつあって何週間も重なって、一つのメガネができるまでに1年ぐらいかかってしまいます。

それが普通なんですが、3Dプリンターを使った手法では、3Dデータになった瞬間にプロトタイプが生まれ基本的には1週間もかからずにできます。今までの製造方法では、サンプルがあがってから検証までのPDCAサイクルは、商品にするまでのサンプリングは最大でも2回。そこまでの設計図や想像の領域パーツを組み合わせて精度を上げていくしかないのですが、3Dプリンターを使ったデザインに関しては、基本的に1回出してみて着ける。それをローンチするまでに数10回繰り返すことができるのが大きく違う部分だと思います。

一方でそれだけではモノにならないので、オーセンティックな工程を走らせながら検証を進めていく。そういう変わらない部分と飛躍的に変わる部分の両方があります。これを合わせるワークフローが今までの会社の仕組みにはなかった部分なので、そこは変わったと思いますね。通常のメガネ産業は既存の手法が約百年間も続いていて、その中で手段を選んで組み合わせてきました。基本的には前例がないものは使われにくいですが、僕たちが着手しているものはほとんどが前例がないものです。むしろ、前例がないものには着手しないという方針がある中で、今までにない素材や製法を既存製法に組み合わせていくことはワークフローを新しく組み替える作業になります。

──新しい手法と今までの手法をミックスするのは大変だと思います。実際にやってみて、どう感じていますか?

アイウェアは基本的には長時間、長期間もっとも身にまとうものだと思います。洋服は毎日着替えますが、メガネはほとんど替えないですし、視力が悪い人にとっては必需品でもあります。そういうメガネに今後はウェアラブル機能だったり、テクノロジーが入ってきたりもすると思いますが、ベースとしては着心地が快適であることが普遍的なニーズであり、価値だと思っています。僕たちはそこの部分がすごく重要だと考えていて、3Dプリンターを使う意義は、その快適性を作る自由度が今までの金型成形でできる限界を超えてくることだと思います。そういう部分では、まだまだテクノロジーで快適性をアップデートしていくことはできると思いますし、そういう観点に立った時に様々なテクノロジーや構造、アルゴリズム、実証データを掛け合わせて快適地を形に起こしていくということは、大きな可能性があると感じています。

人間的な課題やユーザーの都市生活における真意は、都市だけに留まっていないかもしれない。今は都市で生活する人間が次の日にはアウトドアに行ったりと、いろいろな生活模様がありますよね。そういうユーザーが使うシーンを公設して、様々なシーンにおけるより快適なものを僕たちが出し続けていくことに意義があると思います。

身にまとうものである以上、一定のファッション性や自己主張の部分は必要です。アイウェアで言えば、長時間かけるのに耐えられる『しっくりくる』ものなのかという問いが必ず生まれてくるので、そこの答えを僕たちが持っていたいですね。例えば、顔にかけるメガネはスマホよりも種類が多くないと浸透していかないと思っていて。人によって顔の形も似合うメガネの形も違うし、快適な上に似合うデザインとか、そういうことは人によって定義が違うので、顔に着けるものは多様でなければいけないと考えています。新しい生活模様における課題を解決する、『似合うを考察』した上で多様なアイウェアを生み出すためには、新しい手法を取り入れて今後も積極的に製造プロセスの改革を行っていきたいと思います。

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「長く付き合ってくれるお客さんがついて来てくれるかが重要」

──情報やテクノロジーが快適性を追求するためのポイントとなっているんですね。

テクノロジーは多方面に可能性を広げるものだと思いますが、広いがゆえにどこに絞るかが重要かなと。アイウェアをひもといた時にテンションが上がるものであってほしいし、快適でストレスがかからないものであってほしい。それは個人個人違うことなので、この3つが問いとなりテクノロジーを活用することにより、解決策を見出していくようなブランド事業にしていきたいと思っています。

ただ、やっぱり事業会社なのでそれなりに成果は求められます。でも、マーケディング活動を強化した結果の事業的な成功よりは、僕たちの真意が伝わり長く付き合ってくれるお客さんがついて来てくれることが成功するための一番重要なKPIじゃないかなと思います。

──今後、自由にオンデマンドでメガネを作れる時代になった時、他社も同じような手法でメガネ作りをするかもしれません。そういった状況を見据えたブランド戦略は考えていますか?

そこが難しいところではあるんですが、今は本当にガムシャラにやっている部分があります。将来的に技術はコモディティ化していくと思っていて、その時にはいち早くレッドオーシャンではない領域に僕たちは踏み込んでいくべきだと思っています。そこは商売と合理化して勝負するのではなく、僕らはファーストペンギンとして先進的な取り組み、カッティングエッジなところに切り込んでいくことを大前提にやる事業領域になっていくと思います。

戦略という意味ですと、僕たちにしか出せない世界観があるはずです。ファッション性やアイデンティティを基本ベースとして、消費者にこの時代を切り開いてきたところを認めていただければ、僕たちの価値というのがそこに確固たるものとして残ると思います。

──そこに『Lab』という言葉が凝縮している感じがしますね。

今までは『J of JINS』という名前でしたが、今年の8月に変えました。『J』というブランド名でやっていこうという話にもなったんですが、僕たちがブランドとして今後普遍的にやっていく姿勢を盛り込みたく、実験やラボという言葉をあえて主張するためにも入れました。

インタビュー=松山周平

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