脇田玲

脇田玲×MINOTAUR INST.「ネイチャーのようにカルチャーやテクノロジーを使っている」

脇田玲 (わきた あきら)
アーティスト/ 慶應義塾大学 環境情報学部 学部長
科学と現代美術を横断するアーティストとして、数値計算に基づくシミュレーションを駆使し、映像、インスタレーション、ライブ活動を展開している。Ars Electronica Center, WRO Art Center, Mutek, 清春芸術村, 日本科学未来館, Media Ambition Tokyo, 2121_DESIGN SIGHT などで作品を発表。主な展示に「高橋コレクション『顔と抽象』-清春白樺美術館コレクションとともに」(2018)、日産LEAFと一体化した映像作品「NEW SYNERGETICS -NISSAN LEAF X AKIRA WAKITA」(2017)などがある。http://akirawakita.com/

「テクノロジーと触れ合っているようで実は自然と触れ合っている」

松山(MINOTAUR INST.コラボレーションクリエイター) 今の話を聞いて思ったのが、今はそういう本質といった部分を考えずともテクノロジーで遊んでいる人が増えたなという印象がありますね。テクノロジーとカルチャーの2つの言葉だと、良くも悪くも難しいことを考えなくてもテクノロジーで遊べる時代になって来ているのかなと。

脇田 それは強く感じます。技術自体のハードルが下がって、ソーシャライズされて、多くの人が向き合いやすくなったのは確かですからね。そもそも西洋の概念では、ネイチャーの対義語はカルチャーだったかな。昔のヨーロッパでは、ネイチャーはカルチャーを作るための便利な素材として見られていたんです。

松山 そうだったんですね。

脇田 今はいつでもどこでもインターネットからの多くのリソースにアクセスできるし、計算機が小型化していろいろなところに遍在しているので、技術というものがどこにでもある時代です。それがある意味でネイチャーになりつつあるというのはいろいろな人が言っていますよね。つまり、ネイチャーのようにカルチャーやテクノロジーを使っているということは、かつての自然素材のように今は技術を便利な材料として使っているわけですよ。人間は自然に上手く手を入れて田んぼや水路を作って、自分たちが生きやすいように加工してきた。そういった延長線上に今の我々があって、テクノロジーと触れ合っているようで実は自然と触れ合っているわけです。

泉(MINOTAUR INST.デザイナー) ミノトールというブランド名もシュルレアリスム時代のみんなで合作していた本から引用しています。自分の時代感を追求するにつれて、その上の世代の時代のファッションに対して、僕はもうちょっとカルチャーとしてその時代の最新のものを取り入れようとしたら結構批判されたんですよ。その時に、これは新しいことではなくて昔からあったことだと思い、洋服のブランド名というよりもその時代の名前を使ってムーブメントとかカルチャーへの向き合いのスタンスを今ブランド名として続いている感じですね。

Triplet / Land Art / 8K / Visual Audio Installation / 2020

泉 具体的に影響を受けているのは、僕が16歳の時に買ったPORTERのナイロンのバックなんですけど、3、40年経った今でも天然物のクラシックみたいな感じなんです。要は今、天然の物が地球に良いと言う人もいると思うんです。ただ、昔はポリエステルは安いとかチクチクするとか言われましたけど、現在のポリエステルは進化している。天然にはまだ優ってない部分がありますけど、またクラシックになっていく。そういう素材に関してもファッションに関しても常にその視点でいたので、脇田さんのお話を聞いて自分の中でも思い返したり整理することができました。

脇田 「ナイロンはクラシック」っていいですね。松山さんや私にとってはコンピューターはクラシックと言えると思います。音楽の世界でも似たような状況はあって、例えばヒップホップ、2 Live CrewとかRUN DMCとか当時はいろいろと言われてましたが、今は確実にクラシックと実感できます。

Triplet / Land Art / 8K / Visual Audio Installation / 2020

脇田 実は僕、絵が上手い人や手が器用な人に対してずっとコンプレックスを持っていたんです。そんな中で、自分の身体の不自由さを補ってくれたのがコンピューターだったんです。プログラミングで自然現象をシミュレーションし映像化していく作業を積み重ねていく中で、自然に対してより深い洞察力を持つようになっていきました。かつての画家や彫刻家は、創作を通して自然の本質を捉えようとしていましたが、彼らがやっていたことを、今のアーティストはコンピュータというクラシックを使って実現しています。